庄原赤十字病院 耳鼻咽喉科 部長 尾野 里奈 先生

3人の子育てをしながら専門医を取得
医師を続けることで社会や地域に貢献を
庄原赤十字病院
耳鼻咽喉科 部長
尾野 里奈 先生
プロフィール
広島県出身
- 2004年
- 広島大学医学部医学科卒業
- 2004~2006年
- 広島大学病院 臨床研修
- 2006年
- 広島大学病院 耳鼻咽喉科
- 2006年~2008年
- 県立広島病院 耳鼻咽喉科
- 2007年
- 結婚
- 2008年
- 第一子出産のため退職
- 2009年
- 市立三次中央病院 耳鼻咽喉科 後期研修のため週2回勤務
庄原赤十字病院 耳鼻咽喉科 非常勤医師 週3回勤務 - 2010年
- 第二子出産
- 2012年
- 庄原赤十字病院 耳鼻咽喉科 常勤医師 週4日勤務
市立三次中央病院 耳鼻咽喉科 非常勤医師 後期研修のため週1回勤務 - 2014年
- 第三子出産のため、産休・育休
日本耳鼻咽喉科学会耳鼻咽喉科専門医 取得 - 2015年
- 復帰
- 2017年
- 庄原赤十字病院 耳鼻咽喉科部長

広島市内の勤務から庄原に移られた経緯を教えてください。

結婚した当初は広島市内に住んでいましたが、夫は実家も仕事も庄原だったので、第一子の出産を機に、庄原に転居しました。第一子の出産は、後期研修に入ってすぐだったので、研修もこれからという時に退職したことになります。まだ自分1人では何もできないし、医師として中途半端だなという不安を抱いていたことを覚えています。
第一子出産後、仕事に復帰された経緯を教えてください。
退職してしばらくは子育てに専念していたのですが、やはり、このままでいいんだろうかという不安が大きくなり、医局長や指導医の先生に相談させていただきました。「そんなに焦らなくてもいいと思うよ」とか、「一つの指標として、専門医を取ることを目標にしたらいいんじゃない」というアドバイスをいただいたことが、その後の働き方のヒントになりました。ちょうど庄原赤十字病院で、非常勤で外来をしてみないかというお話をいただくことができたのは、本当にありがたいことです。同時に専門医資格のためには研修も必要だったので、庄原から車で30分くらいの三次中央病院にご理解とご協力をいただき、週2日は研修をさせてもらうことになりました。
子育てと仕事の両立では、どのようなご苦労がありましたか。
どうしても時間的な制約がありますよね。例えば夕方に救急患者さんが来られて緊急手術になっても、私は17時には帰らなければならず、一つ症例が経験できないわけです。しっかり研修をしたい時期は、特にジレンマを感じていましたね。子どもが熱を出した時も、私はなかなか休めなくて、夫や夫の両親に見てもらうことが多いのですが、「お母さんがいい」と言って泣かれると辛いですよね。働くお母さんはみなさん同じような経験があると思います。以前、先輩の女性医師から「抱っこひもで子どもを抱っこして回診に行っていた」という話を聞いたことがあります。私はそこまでではないですが、やはりどうしようもない時は、病院に子どもを連れてきて「お絵描きしててね」と控え室で待たせて、入院患者さんの処置をしたこともあります。
専門医資格の取得についてはいかがでしょうか。

第三子を出産して、産休中に専門医試験を受けました。一番下はまだ生後2ヶ月で、他の2人は4歳と6歳。とても置いては行けなかったので、両親にも同行してもらって、東京へ3日間の家族旅行に行ったみたいになりました。生後2ヶ月というとまだ旅行には早い時期なので大変でしたが、家族のサポートもあってなんとか乗り切りました。
そういった大変な時期を振り返ってみて、今どのように感じますか。
私は今は常勤医としてフルタイムで働いていますが、非常勤や検診だけという選択をして、子どもとの時間を大切にされている先生もいらっしゃいます。子どもも1年1年大きくなり、少しずつ楽になります。かと思ったら、小学生になったら帰宅時間が早くなったり、勉強が気になったりするので、保育所のほうが楽だったと思う時もあります。ですから状況はどんどん変わるし、何が正解かなんていうのは分からないですよね。その時その時、自分でベストだと思うことをやってきて、今があるのだと思います。
やめたいと思うことはありませんでしたか。
もう少し休んでも良かったかなと思うこともありますし、やめて子育てに専念するという選択も、それはそれで良いと思います。ただ私の場合は、医師になりたいという強い気持ちで頑張ってきたので、やめたいと思ったことはありません。医局や庄原赤十字病院・三次中央病院の先生方にご協力をいただいて、指導医の先生や患者さんからもさまざまなことを学ばせていただいてきたので、感謝の気持ちを忘れてはいけないと思っています。広島で育ち、広島大学を卒業し、広島の病院で学んだことに対して、何かお返しができるとしたら、広島で医師を続けること。それが、私にとっての生きがいでもあります。自分にできることで、社会や地域に貢献していきたいですね。
後輩の女性医師の方たちに、家庭と仕事の両立について、アドバイスをいただけませんか。

アドバイスになるかどうかは分かりませんが…。家事の負担は、どうしても女性の方が大きくなってしまうと思うので、両立するために、家事の手抜きをすることもあります。例えば帰りが遅くなる時には、スーパーのお惣菜に頼るのも一つですよね。あまり頻繁だと良くないかもしれませんが、イライラして不機嫌な態度で家族に接するよりは、ちょっと手を抜いて、10分でも20分でも、子どもたちの話をゆっくり聞いたり、のんびり過ごしたりするのもいいんじゃないでしょうか。ポイントは明るく! 「今日はみんなの大好きなコロッケ買って来たよ~!」みたいな感じで笑顔で食卓に出せば、子どもたちも大喜びです。手を抜いた分は、笑顔と愛情でカバーしながらやっていきたいと思っています。
最後に、庄原の印象を教えてください。
私自身は街育ちだったので、中山間地域にある庄原で生活をすることに、最初は少し抵抗がありました。買い物が不便なんじゃないかとか。でも多少の不便さにはすぐに慣れますし、特に困ったことはありません。それに、やはり自然が豊かなことは、子育て世代にとってはすごくいいと思います。特別なお出かけをしなくても、十分に走り回って遊べる環境があるというのは、ありがたいことですね。

(2017年6月)